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北園みなみ Lumiere Liner Notes

各楽曲については、まず雑感から入り、そして譜例を用いた解説を行うという形にまとめた。読むに際して、本文は短なコラムの寄せ集めでもあるから、何処から読み始めても、また拾い読みの形を取っても構わない。是非「lumiere」と合わせて楽しんで頂きたい。
text by Minami Kitasono

「夕霧」

ピアソラの音楽を念頭に、本曲を書き進めていくうちに、時代劇とその音楽とが思い起こされた。それでオープンスネアで予定していたパートを、締太鼓に担当させてみようと思い立つ。
締め太鼓には、木材を主体に紐で締めたものと、金属枠のボルト式とがある。
今回、使用されたのは後者である。マイクを通すと、西洋楽器主体のアンサンブルに自然に溶け込みながらも、和楽器独特の雰囲気を主張する音色に仕上がった。
ポップスに和楽器および民族楽器を取り入れることへの抵抗感は、それが楽曲に奇抜な印象を与え、軽薄な響きを与えるのではないかという懸念から生じていた。私が当面の理想とするところでは、異なる音楽様式を背後に持つ楽器同士は自然な結びつきを見せている状態が望ましい。今回のレコーディングで、それらをあたかも同郷であるかのごとく響かせるためのヒントを得たと感じる。

・3本のサキソフォン

バリトン、アルト、ソプラノの3本からなるサキソフォンパートには、いくらか独立性を与えるようにアレンジを施した。
サキソフォンという楽器への思い入れは私の音楽遍歴に一因がある。私は、中学生の頃、サキソフォン・アンサンブルの団体に所属していた。演奏される楽曲は、サキソフォンという楽器の歴史からして、おのずとフランスの20世紀初期の作品が多く、中には前衛性に彩られた作品も含まれ、当時の私には耳新しく感ぜられた。
中でも、私の好きだったデザンクロの四重奏曲の最終楽章では、絶えずハーモニーが変化し、明確な進行方向を示さない響きが連続する。言い換えると、あらゆる可能性を声高に示唆するような、極彩色の響きが連続する。
私はこれを、華やかさと気味悪さの混在した音楽という様に捉えていたと思う。その点で、ジャズに近い印象を受けたし、そのことが私に親しみを感じさせた。事実、モダンジャズの多くは、フランスの近代音楽から多大な影響を受けている。
この頃から抱き始めた、複雑な構造、それゆえの奥ゆかしさを持つ音楽への憧れは、サキソフォンの音色を介したものであり、そして本作でも理想として掲げられているのだ。

・アウトロの面白い場面

アウトロでは、一種の冗談としてサックスの三重奏が聴ける。背後には旧式のリズムマシンを伴っているだけに、前半のシリアスさからは程遠い。
3本のサックスそれぞれに異なる楽器が重ねられ、音色の上で独特な効果をもたらしている。ソプラノにフルアコースティックギター、アルトに女性ボーカル、バリトンにエレキベースという風になっている。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

・インタールードでのメロディー掛け合い

両者共に対等な関係であると言えるのは、互いが譲り合い、メロディー同士は望ましく無い接触を避け、その結果、2つで1つの存在感を作り上げている為だ。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

「つぐみ」

仮タイトルは「カントリー」であった。撥弦楽器(主な奏法として弦をはじくことで演奏される楽器)がいろいろと組み合わさった曲を作りたくなり、あれこれ楽器を集めるところから始めた。
アコースティックギター、マンドリン、バンジョー、ウクレレが、それぞれは控えめに、組み合わさり、1つの楽器に聞こえるように心がけた。
親密な雰囲気を演出するため、脇役選びに一工夫した。やわらかなフリューゲルホルンや、陰影に富むヴィオラが、この役を担っている。これらがトランペットとヴァイオリンだったら、また違った華やかさを醸しただろう。
また、ロッズ(木や竹でできた細い棒を束ねたドラムスティック)で演奏されたドラムは素朴なムードを作り上げている。

・コーラスパートについて

Bメロからサビにかけて、男性コーラスが3声で収録されている。ここで聴ける様な効果をもたらすには、必要最小限の人数である。4~5声にすることも可能であったが、狙いより重心が下がっただろう。人数を切り詰めたことで、軽くよく響く仕上がりとなった。またレコーディングもいくらか楽に済む。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

また、コーラスが他の楽器とユニゾンで演奏されている場面も点在する。

・マンドリン+女性コーラス ※対照的な音色の組み合わせ

ここでは、編曲上の主体と、その補佐として、マンドリンと女性ボーカルが組み合わされている。
音色の特性からすると、マンドリンの方が瞬間的には目立ち易いが、時間の経過と共に、持続音が減衰音を覆う様相を見せるため、両者のいずれかが突出して聞こえることも無く、対等な印象を作り上げている。またマンドリンには、トレモロ奏法を用いることで、バランスを図った。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

女性コーラスには、音域や、演奏技術の一般論を考慮し、メロディーの一部分を担当させた。こういった工夫は、編曲上の主体に準ずるパートに対してであれば可能だ。

・ヴィオラ+男性コーラス ※近似的な音色の組み合わせ

2つで1つの音色を生み出すイメージ。この旋律は曲中で2度、インタールードとアウトロに登場するが、アウトロでのみ、この組み合わせが用いられている。ささやかな変化を与え、反復の退屈さを回避する方法だ。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

「新しい街」

ジャマイカのミュージシャンが、北米のラジオ放送でジャズを聴き、様々な誤解の末に生まれたのがスカである、という話を見聞きすると、想像される当時の諸音響システムを絡めて納得できないでも無い。
この様な音楽を、

北園みなみ Lumiere Liner Notes

音源_JAZZ

こう聴き取った。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

音源_Reggae

というのは、些か強引な気もするが…経験上から、テンポの速い4ビートのペダルハイハットのリズムが、体感上のテンポ(2分の1)の4分音符の裏拍に聴こえたり、また強拍に置かれたベースラインの根音が次に続く弱拍のノートの存在を霞ませて聴こえることがある。前述のような説も、こういったことから自然に起こりうると感じる。ジャズを簡素にして生まれた音楽がスカだったのかもしれない。
私が、初期のスカミュージックから、レゲエ、そしてスカコアといった音楽を通り抜けて、自分なりのレゲエを作る試みは、レゲエの前身であるスカの更に背景を見据えながら、そしてそこから派生したスタイルを念頭に進められた。
リズムへの一工夫として、スネアと場所を同じくして、ボンボという大太鼓を配置した。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

ボンボとは、南米のフォルクローレ音楽で用いられる、リズムの低音を担当する楽器である。楽器自体は、小口径のバスドラムほどの大きさがあり、しかし重量は軽く、体から下げて演奏される。

・曲中で繰り返されるホーンセクションのメロディー

以下はイントロのパートである。ホーンセクションが主旋律を担っている。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

サビに入ると、イントロでは主旋律であったものが、そのままボーカルのバックグラウンドとして演奏される。

北園みなみ Lumiere Liner Notes

初めて聴いた人にとっては、新しいメロディーと、既知のメロディーが混在する場面だ。ボーカルが主体の場面であり、背後の存在はあくまでも脇役に過ぎない。