プロとしての第一歩

Lampが今年リリースした久々の新作『ゆめ』に、北園さんはブラスとストリングス・アレンジで参加しています。それがプロとしては最初の仕事になりますか?

こういうかたちで作品になるものとしては最初です。それまではPC上で細かいことは考えずに耳で判断して作っていたので、現物の楽器を考慮して管弦のアレンジをするというのは初めてでした。あの時期に、こうして最初の一歩を踏み出すことが出来て凄くよかったです。打ち込みの段階でも自分が出来ることはしていたと思うんですが、やっぱり本物をアレンジするのは違うんだなということに気がつきました。

今回、ポリスターからリリースになったデビュー盤『promenade』で、生音でレコーディングしたいというのは北園さんからの申し出だったんですか?

そうですね。打ち込みでやっていた部分をちゃんと演奏者に演奏してもらいたいと思っていました。その後、いろいろアルバムの構想が変わっていって、ここに落ち着きました。

スタジオで生でやってみようという方向に変わっていって。

はい。今、出来るだけのことをやろうと。家で適当に作ったものではお金はいただけない、と思ったのが一番大きかったんですけどね(笑)

いや、北園さんの音楽は全然適当には出来てないですよ(笑)。この5曲はどうやって決めたんですか?

いろいろ試してみたかったことがあって、それをこの5曲でとりあえず試せると思ったんです。

1曲目が「ソフトポップ」というタイトルなんですが、この言葉をあえて打ち出したことに挑戦状めいた感覚がありますよね。コードもメロディもソフトでポップどころかとても難解なのに、いやおうなく耳に入ってくる(笑)

曲自体は2年前に作った「Dorothy」という曲が原型です。そのアレンジをやり直したというイメージですね。僕はアレンジをする前に曲の構成を考える期間があるんですが、そのときにタイトルは「ソフトポップ」になっていました。自分に対する挑戦みたいな意味合いも大きいですね。

「電話越しに」やSoundCloud上でも名曲との評判が高かった「ざくろ」は歌詞も素晴らしいですよね。ラブソングを書くことにはあまり抵抗はないんですか?

そうですね。まわりくどい言い方をするよりは、明快なラブソングがいいとも思っています。僕がいいと思う歌詞はたいていシンプルなので。

「プラスティック民謡」に込められた想い

個人的に言えば「プラスティック民謡」には本当に驚かされました。

これはアルバムのなかでは一番考えないで作った曲です。即興の弾き語りを録音して、最初のAメロとBメロの7拍子も完成したので、あとはもう曲にするだけという感じで。本当に自分の自然な部分が出ていると思います。7拍子なんですけど、また独特の乗り方というか。民族音楽の舞踊とかも、中東のほうとかだと奇数拍子だったりするし、ワルツも3拍だし、それを繋げていくと変拍子になる。僕は本当に変拍子には自然に乗ってしまいますね。それがお笑い的なのかもしれませんけど(笑)。

このクラリネットのお囃子みたいなイントロからその後の展開を予想できる人は誰もいないでしょう? しかも、それに対して「プラスティック民謡」というタイトルをつけられるのは凄いセンスですよ。歌詞も「エビはカニじゃない」的なナンセンスと思わせて、可笑しみと切なさが絶妙に交差していて。やっぱり日本で日本語のポップスをやるということを考えると、もともとはアメリカから来た音楽なので「日本人のルーツはいったいどこなんだ?お正月の音楽なのか?」みたいな議論になったりするんですよ。それこそ大滝詠一さんもそういうことに対する自分なりの正解を考えて「ナイアガラ音頭」をやっていたような部分もあったと思うし。それに対して「プラスティック民謡」で、すっと正解のひとつを出された感じがしましたね。

この曲のタイトルは「プラスティック民謡」だなと思ったんです。曲自体もそういう見せかけの民謡みたいなもの、表面的な日本みたいな感覚を言いたかったし。アルバム・タイトルの『promenade』にも、たまに散歩したときに山間のほうに入っていって自然の景色を見ても、結局ガードレールとかで整備されていたりするのを見てしまったときとかの、いろいろな思いが入っています。

サウンドも歌詞も含めて日本語のポップスの可能性が今また新しく示され始めているように思うんです。その中でも、北園みなみはひときわ謎めいているし、ある意味これ以上は行っちゃダメみたいなリミッターがない存在だとも思ったりしていたんですけど、今日お話を聞いてみて、やっぱり人間がやっている音楽という部分は見失いたくないというか、そこをベースに音楽を考えているという強さを感じました。やりたいことがヒューマンというか、ユーモアがちゃんとあるし。

そうですね。なんていうか、打ち込みに対してすごく人間的というのはありますね。人が演奏する限りはすべてのパートが歌えなきゃいけないなとか。でも、サウンドの可能性を追求するという意味ではコンピューターは大切だなと思って、最近MIDIの教則本とかも買ったりしました。クラブミュージックにも興味があって、音色の可能性とか空間の可能性とか、もうちょっと追求できる部分があるんじゃないかなと思ったりもしています。今は、なんでもやってみようかなと。

今後、北園みなみとしてメディアに出たり、もっと実体化していくとか?

それは別の問題ですね。創作とは別の話なので、そこはまだ分かりません。

でも、自分から離れた存在というか、人に知られたくないための存在だった北園みなみが、今は逆転して、もっと自分の音楽を聴いてもらいたいという気持ちになっているのは本当なんですよね。

そうですね。聴いてくれる人がいる限りは。そういう人もいるんだというのがありがたいです(笑)。でも、結局、誰にも聴いてもらえないで創作していた時期というのが、本当に自分の原動力があった時期なんだと思っています。誰も聴かないのに音楽を作っていたことを忘れてはならないというか。これからもそうです。

活動のペースはどう考えていますか?

あんまり間を空けたくないですね。CDをリリースすることをメインに活動していこうと思っているので、早く次の作品を作りたいです。
Interview & Text by 松永良平